ウィルの太陽通信~4~

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皆さんこんにちは

株式会社ウィルの更新担当の中西です。

 

さて今回は

~O&Mと収益最大化~

 

運用保守(O&M)は発電量を最大化し、ダウンタイムと劣化を最小化する事業そのものです。本稿では、監視設計、故障診断、清掃・点検、リパワリング、さらに自家消費・PPAを含む収益設計までを解説します。

1. 監視とデータ活用

  • 計測粒度:PCS単位、ストリング単位、モジュール面の温度・日射。粒度が細いほど異常検知が早い。

  • 指標:PR(Performance Ratio)、アベイラビリティ、MTBF、MTTR。季節・気象で変動するため比較期間を正しく定義。

  • アラート運用:閾値設計、誤検知の抑制、一次切り分け手順(通信・PCS・ストリング・モジュール)。現場出動の判断基準をSOP化。

  • 可視化と報告:月次報告で発電・気象・停止履歴・是正措置・次月計画を提示。設備の「健診票」を顧客と共有し、更新投資の合意形成を促す。

2. 故障モードと診断

  • ストリング断線・緩み:開放電圧・短絡電流の差異、サーモでホットスポット、接触抵抗の上昇。端子の圧着やコネクタ互換に注意。

  • モジュール劣化:PID、LID、セルクラック、封止材の黄変・脱気。IVカーブとサーモの併用診断。

  • PCS不具合:冷却不足、コンデンサ劣化、ファン故障。フィルタ清掃、ファームウェア管理。

  • 汚れ・影:花粉、砂塵、鳥害、樹木成長、積雪。季節要因を考慮し、清掃・剪定の最適タイミングを年次計画に織り込む。

3. 清掃・点検の最適化

  • 清掃:水質(硬度)、ブラシ素材、洗剤の可否、作業時間帯(高温時を避ける)。陸屋根では排水計画を厳守。

  • 点検周期:年1〜2回の定期点検に加え、台風・降雪・地震後の臨時点検。架台の緩み、貫通部のシール劣化、配線の摩耗を重点確認。

  • 記録:点検チェックリストと是正履歴、写真・測定値の時系列化。SLAと連動したKPI管理。

4. リパワリング・アップグレード

  • PCS更新:効率向上、影や部分発電の最適化。新PCSでMPPTチャンネル増加や低電圧立ち上がりが有利。

  • モジュール更新:面積あたり出力の増大。屋根荷重、架台適合、電気容量の見直しを伴う。火打ちや補強も検討。

  • 最適化デバイス:パワーオプティマイザやマイクロインバータで影響の分散。保守性とコストのバランスを評価。

  • 保険・保証の整合:更新後の保証、既設との混在可否、メーカー承認を取得。

5. 自家消費・PPA・蓄電の設計

  • 負荷プロファイル適合:工場・冷蔵倉庫・物流センターなどの昼間負荷に合わせ、PCS容量、逆潮抑制、需要家側制御を最適化。

  • PPA契約:価格フォーミュラ、更新条項、設備の所有・責任分界、計量・検針、メンテSLAを明確化。

  • 蓄電システム:ピークカット、非常用、需給調整。安全(BMS、消火、区画)、保険、保守の標準を整備。

  • 環境価値:証書・トラッキング、CO₂削減量のレポーティング。顧客のESG評価・取引先要件への適合支援。

6. 収益最大化の実務KPI

  • PR、アベイラビリティ、計画外停止時間、故障検知から一次対応までの平均時間、再現故障率、清掃後の出力改善率、年次劣化率。KPIの改善をO&M契約の継続・拡張に結びつける。

まとめ

O&Mは「維持費」ではなく「発電量を増やす投資」です。監視・点検・清掃・アップグレードをデータで最適化し、顧客の経済価値(電力費削減・環境価値・レジリエンス)を最大化することが、長期の信頼と紹介、ストック収益の拡大をもたらします。